「草の葉に似ている 潮の匂いに似ている 冬の土埃に似ている そんな理由で好きになった それから逃げたくなった」(トンボの記)
「ユリイカ」「現代詩手帖」などで作品を発表してきた詩人、藤本徹による『青葱を切る』に続く第二詩集『あまいへだたり』。
日々の何気ない景色、静かな波のように移ろいゆく感情。幾つもの淡い記憶の中に潜む孤独を甘いといい、もっと頬張りたいと藤本さんは言います。触れられそうで触れられない、自然と溢れてくる気持ちを濾過された言葉たちがやさしく包み込んでくれます。
書籍の装丁を担当されたのはギタリストの清岡秀哉さん、日常の断片を柔らかな色合いで表現される画家・狩野岳朗さんによる装画も相まった凛とした佇まいも美しく、何度も言葉を噛み締め読み返したくなる一冊です。