スイスの近代建築を代表する建築家、ジャン・チュミが設計した保険会社 Vaudoise Assurances のビルディング。戦後、フランス語圏スイスにおける企業建築の先駆けともなったこの建物を、同社に招かれたイラストレーター/建築家の Nigel Peake（ナイジェル・ピーク）が描いた作品集。
タイトル通り、建物を通り抜け（＝「through」）、建物沿いに（＝「along」）、建物の上から（＝「above」）、3つのパースを用いながらひとつの建築がまとう様々な側面とストーリーを作家に特有の距離感を持って描き出します。それぞれにグラファイト、インク、水彩を用い描かれたイラストは、3点の大きな一枚絵が分割されたもの。断片でありながらそれぞれに印象的なディテールは、具体と抽象の間で、静かに、詩的な味わいを放ちます。ハードカバーにトレーシングペーパーを巻いた造本も美しい一冊です。