わたしは本の子。物語の世界からやってきて…。この本は、本でできた本。ページのあちこちに物語を記した文字が踊り、ストーリーがこぼれ落ちています。少女が旅する大海原の大波は「ガリヴァー旅行記」や「海底二万里」でできており、冒険につながる道には「不思議の国のアリス」が敷き詰められ、森で迷子になれば「ヘンゼルとグレーテル」が聞こえてくる。本の中に本があり、物語の中に物語があり、生き物のようにつながる文字たちが作りだすシルエットは、登場人物の単なる背景ではなく、書物というものがたどってきた一筋の道、長く大きな歴史の一端を示しているかのようにも思えます。物語は生き続ける。わたしたちは物語でできている。本をひとつの有機体のようにとらえ、世界という大きなものを物語で表現しようとする、独特のイマジネーションに満ちた本書は、決して消えない読書のともしびを再び大きくしてくれる一冊かもしれません。物語を土台とした大胆な構図をどうぞお楽しみください。
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