安野光雅による、あいうえお五十音を木づくりで表現したこの上なく美しく不思議なひらがなの絵本。まず手書きの木を組み合わせて文字を作り、その横にその文字から始まるモノやコトの絵を並べます。「あ」はあんぱんとあり、「ぬ」はセミの抜け殻、「め」は迷路、「よ」は羊羹…というように、木製の玩具のような文字の横に、独特の淡麗な筆で描かれたそれぞれの物の形が絶妙に配置され、その面白さと美しさには思わず見入ってしまいます。単に子どもにひらがなを教えようというのではなく、日本独自の木組みの技術の妙と伝統的な形の魅力を共に伝えたかったという著者ならではの美意識と感性がにじみ出た、本当に職人仕事のように惚れ惚れするほど見事、見れば見るほど興味は尽きないこの文字絵本。発表から40年の時を超えて今なお愛されるロングセラーです。
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