パリの通りで見つけた折衷様式のスペイン・タイル、北園克衛が手がけた推理小説のカバーデザイン、信州の農民美術が生んだ木彫り人形、赤塚不二夫が描いた特異なキャラクター、ダリが手がけたレコードジャケット、獅子文六の新聞小説に添えられた宮田重雄の挿絵、ヒッチコック映画の衣装デザイン…。名著『ぼくの美術帖』(1982年/PARCO出版、2006年/みすず書房)から35年、イラストレーター原田治が綴ってきた日々の覚書のような美術エッセイがまたあらたな一冊として編まれました。アカデミズムや批評的態度からは自由に、名の有る無しも問わず、気の向くままにランダムにお気に入りの美を取り上げてゆく姿勢の軽やかさ、美意識のたしかさ。取り上げられる美術への関心を掻き立てられるのはもちろん、対象への態度や構え、楽しみかたそのものを教えてくれるような一冊です。シンプルで印象深いブックデザインは服部一成。
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