バスの中で些細な諍いに遭遇し、偶然にも数時間後、駅前でその張本人である男を見かけた。
まるで小説のはじまりのような、要約するとたったこれだけの数行に満たないなんてことのない出来事が、レーモン・クノーの手にかかれば自在に姿を変える。ただのメモ書きからはじまったこの言葉遊び、同じ内容を99通りに表現し直すというユニークな試みがされた一冊です。演劇調や広告調、果ては図形のみだったりと、あの手この手で書き換え、言い換えられています。『地下鉄のザジ』などで知られる20世紀フランス文学の旗手による究極の言語遊戯。内容に合わせて文字が曲がっていたり、赤字になっていたり、文字が逆さになっていたり…遊び心満載のデザインも存分にお楽しみください。