ちくま文庫の名作がまた一冊、久しぶりに重版されました。ボン書店。昭和7年に誕生し、北園克衛や春山行夫ら若きモダニズム詩人の詩集を洒脱なセンスで刊行し、そしてほんの数年で、まさに彗星のごとく幻のように消えて行った出版社。本書は、その刊行人であった「鳥羽茂」という謎の人物を、自身も詩集専門古書店を営む著者が追い続けた追跡の書です。常に新しい波が起こっていた時代に出版社を起こすことで、モダニズムの精神を体現したこの鳥羽茂とはいかなる人物であったのか。「本は残ってもその本を出した人物の事は残らない」という著者の緻密な執念と冷静な情熱でもって、このミステリアスな刊行人の姿が少しずつ現れてくる様は実にスリリング。また、鳥羽茂を追う事によって、当時の時代の空気、レスプリ・ヌウボオの息吹を鮮やかに描き出し、たぐい稀な版元が生まれたその背景を読む者に真摯に伝える著者の筆は感動的ですらあります。出版に命をかけた一人の男。その男を追い続けた著者。その追跡劇から生まれたロマンはいつまでも読者を魅了するでしょう。文庫化にあたって書き添えられた「文庫版のための少し長いあとがき」も貴重な特典です。
商品情報 |
著者 | 内堀 弘 |
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発行 | 筑摩書房(ちくま文庫) |
サイズ | 105mm × 148mm |
ページ数 | 294 |
その他 | ソフトカバー |