1970年に19歳で月刊漫画誌「りぼん」でデビューを果たしながら、70年代後半にたった3冊の作品集が刊行されたきり、永らく幻となっていた千明初美(ちぎら・はつみ)さんの漫画が、あらたな装いでよみがえりました。刊行を後押ししたのは千明作品に強い思い入れを持つファンのひとり、漫画家の高野文子さん。高野さんの企画・監修のもと、絶版となっていた単行本からの4編に、雑誌に掲載されたきりとなっていた1編を加えた珠玉の5作を収載。作者の繊細な世界観が色濃く表現された表題作「ちひろのお城」、昭和の暮らしぶりや生活の場がストーリーの背景にさらりと息づく「お二階は診察室」など、いずれも多感で素直になれない学童期の少年少女たちの心の機微と成長を描いた素晴らしい作品たちです。本編の合間には、国会図書館に眠っていた作品群から高野さんがお気に入りの小さな描写をすくい取り、再構成した縮刷ページも掲載されています。往年の読者も、初めて出会う若い世代も、懐かしく、とびきり可愛らしい千明初美の漫画世界をたっぷりご堪能ください。
本屋の特集一覧
| |