この世界にいる者で、死んだ人の国へいけるのは、鳥だけなのだと、だれかからききました。鳥は、よみの国へのおつかいをするのだと。
スダア宝石店のその店内、鉢植えの大きなゴムの木に、どこからどこまでもまっしろな、白いおうむがとまっています。おうむは「こんにちは」ときみょうな声で、さけびます。みずえは毎日、この白いおうむに会いに行きます。実はそこで、みずえはおうむにあるひとつの言葉をこっそり教えようとしていました。
表題である「白いおうむの森」はこのような内容ではじまります。もう会えない人を想う時、人はどのような気持ちで過ごすものなのでしょう。白いおうむの森で体験したものはみずえにとってどういったものなのでしょう…。
童話作家・安房直子さんの短編集「白いおうむの森」ではその他、空想のとびらをひらき、眠っていた感情を思い起こすような、せつなく味わい深い作品が7編収録されています。
また巻末に、作家の蜂飼 耳さんが「遠くの人を思うこと」というタイトルで、安房直子さんの童話について解説を寄せています。
__収録作品
雪窓/白いおうむの森/鶴の家/野ばらの帽子/てまり/ながい灰色のスカート/野の音
(原口)