早川書房、東京創元社、新潮社、講談社などなど、真鍋博が装丁を手がけた数多くの書籍の表紙をフルカラーで一望。これまでも真鍋作品には礼讃を込めて様々な紹介本が出されてきましたが、純粋にカバーデザインのみに特化したある意味ファン待望の一冊でもあります。イラストレーターにとって、印刷された作品こそが勝負、とした潔い姿勢と哲学のもと量産された多くの作品群。主な主戦場だったSF、ミステリの他にも意外なジャンルでの活躍も俯瞰できるのが楽しい。近未来的なシャープさ、個を排したかのような平面的な表情、そこから生まれる代えのきかない個性。長い間、多くの読者の目に焼きついてきたその仕事の数々をお楽しみください。また本書は、昭和のある時期ある特定のジャンルのブックデザインを見渡すことのできる一冊ともなっていて、そちらも興味深いものです。盟友・筒井康隆、豊田有恒の追憶、そして最果タヒ、榎本俊二による寄稿もあり。監修を務めた島根県立美術館学芸員の五味俊晶氏の詳細な解説付き。