「いらっしゃいませ」
グラスを、ふいている手が、ふさふさしていた。
バーテンダーは、いぬだった。ようやく過ぎゆく夏のうしろ姿が見えた、という夜に、ふらりとはいった三軒目だった。
(本文より)
主人公がふらりと迷い込んだのは、犬がバーテンダーをつとめる、つきだしで「詩」を出しているバー。
宮沢賢治、萩原朔太郎、T・S・エリオット、吉岡実、ガートルード・スタイン、アメリカ・インディアンの口承詩、石原吉郎、石牟礼道子ほか、全31篇の詩をめぐるストーリー。詩人・斉藤倫がおくる、今を生きる人々へ捧げるゆたかな一冊。詩を愛し、詩をこれから愉しみたいあなたへ。装画は三宅瑠人。(韓)