愛犬フラッシュの眼を通して、英国19世紀の詩人エリザベス・バレット・プラウニングの波乱にとんだ生涯を描いた、ユニークな伝記です。はじまりはフラッシュのご先祖にあたる犬のお話から。スパニエル犬がなぜスパニエル犬なのかから始まります。お話は第一章から六章まであり、フラッシュの目線や仕草が伝えるのはエリザベスの日常だけではなく、家父長制との確執、貧民窮の様子や英国とイタリアの対比、心霊術などの当時の社会背景が、この伝記を奥行きを深いものにしています。また附録としてヴァージニア・ウルフ「忠実なる友について」、エリザベス・バレット「わが忠犬、フラッシュに寄す」、年譜など、情報としてのボリュームもあり、読み応えのある一冊です。