淡麗な鳥の絵で知られるイラストレーター・ユカワアツコさんは、動物好きはもろんのこと、実は時代劇や時代小説愛好家でもあります。その「好き」が高じて、江戸を舞台に猫や狸など動物の姿をした登場人物がそれぞれの職で活躍する漫画作品を誕生させました。それがこちらの「暦売浮世情 こよみうりうきよのなさけ」。西洋の珍しい暦(アドベントカレンダーなどですね)売りをなりわいとする二人の物売り。それを取り巻く町を守る同心や与力、そして親分と称される大物商人ら。彼らが織りなす年の瀬の触れ合いに、人の世の情けをじんわり感じる…短いながらも粋であったかい物語が展開されます。江戸は様々な職を持った町人が活躍した町でもあり時代でもあったことを思うと、そしてそれらを愛らしい動物たちが演じるとなると、二重三重の面白さが生まれます。ユカワさんの描く、一風変わった生き物たちの軽妙な動きや会話をぜひお楽しみください。福岡の猫本専門店・書肆吾輩堂さんからの刊行です。初版限定ポストカードつき。