ぶらんこの「ギボギボ」に乗って遊ぶことが好きな少女・かおりは、ある日、夕暮れが近づいた時間に不思議な体験をします。海があらわれ太陽があらわれ音が鳴り色があふれ…。黄昏時に感じるあの不思議な感覚を、言葉と視覚にのせて表現したような奇妙で幻想的な絵本。色彩であったり楽器であったり、あるいは一匹の「蚊」であったりと、そのシュールな世界を紡ぐモチーフが面白い。それらの魅力を増すのは挿絵を担当した上野紀子。「チコ」シリーズを思わせる、帽子を目深にかぶり表情を見せない少女が登場し、その陰影に富んだ優美な世界がこの絵本でも展開されています。言葉と絵の絶妙な調和、あやしくイノセントな空間。独特の語感と濃密な絵。そんな、大人も魅了してしまう力がこの絵本には詰まっています。上野紀子のチコ的少女に会える数少ない作品としても、ファンにとっては大切な一冊。